トンガ沖で起きた海底火山の大規模噴火。
発生から一夜明けてもけが人の有無などの詳しい被害状況がわかっておらず、心配な状況が続いています。
そんななか、Twitterを中心に「トンガの噴火は破局噴火」という書き込みが多くなっており、不安に思う方も多いのではと思います。
そもそも破局噴火とは何なのでしょうか。
またカルデラ噴火との違いや、噴火後の生活への影響も気になりますよね。
「破局噴火」の言葉の由来から実際の影響まで、まとめました。
破局噴火とは?
「破局噴火」の言葉の由来
破局噴火は地下のマグマが一気に地上に噴出する壊滅的な噴火形式とWikipediaでは説明されています。
破局噴火(はきょくふんか)は、地下のマグマが一気に地上に噴出する壊滅的な噴火形式を表す用語。地球規模の環境変化や大量絶滅の原因となるもの[1]を指す。なお正式な学術用語としてはウルトラプリニー式噴火(英語: Ultra Plinian)、大規模なカルデラの形成を伴うことからカルデラ噴火と呼ぶ場合もある。
引用:Wikipedia
そもそも「破局噴火」という言葉は、もともと石黒耀が2002年に発表した小説『死都日本』のために考案した用語。
「近代国家が破滅する規模の爆発的巨大噴火を破局噴火と呼ぶ」という小説の中の設定だったのですね。
その後「破局噴火」という言葉は小説を飛び出して、大噴火を表す言葉として一部の火山学者やマスコミ報道で使われるようになったといいます。
しかし国際的あるいは学術的な用語として通用するのではなく、あくまで日本でのみ使用される用語ということですね。
「破局噴火」の定義
元々小説の中の言葉だった「破局噴火」。
その後メディアでも取り上げられるようになったため、気象庁としては「破局噴火」の明確な定義はない状態です。
- 気象庁では、噴火の規模表現について厳密に定義していない(いくつかの火山の噴火シナリオで、学術的な定義とは別に規模を定義している)。
- 噴出物量をもとに噴火の規模を記載する場合は、「噴出物量が○~○トンの△規模の噴火」という表現を使用する。
- 噴火の記録基準に満たない噴出現象については、「規模の小さな噴出現象」あるいは「ごく小規模な噴火」等の表現を使用する。
- 学術的な分類
- 超巨大噴火・・・噴出物量が1010トン以上の噴火。カルデラ噴火または破局(的)噴火ともいう。
- 非常に大規模(な)噴火・・・噴出物量が109~1010トンの噴火。
- 大規模(な)噴火・・・噴出物量が108~109トンの噴火。
- やや大規模(な)噴火・・・噴出物量が107~108トンの噴火。
- 中規模(な)噴火・・・噴出物量が106~107トンの噴火。
- 小規模(な)噴火・・・噴出物量が104~106トンの噴火。
- ごく小規模(な)噴火・・・噴出物量が104トン未満の噴火。
- 大噴火、中噴火、小噴火、微小な噴火という用語は原則使用していない。ただし、浅間山など噴火シナリオで定義している一部の火山では、使用することがある。
引用:気象庁
しかし気象庁のHPにもある通り、学術的な分類として、破局噴火は「噴出物量が1010トン以上の噴火」という基準はあります。
- 超巨大噴火・・・噴出物量が1010トン以上の噴火。カルデラ噴火または破局(的)噴火ともいう。
つまり、一般的には噴出物量が1010(1,000,000,000)トン以上の噴火が破局噴火と言えそうです。
トンガの噴火は破局噴火?
噴出物量が1010トン以上の噴火が破局噴火と考える場合、トンガの噴火が破局噴火なのかどうかが気になりますよね。
しかし2021年1月16日現在、トンガの噴火の噴出物量は発表になっていません。
それもそのはず、まだ噴火してばかりで現場どころか周辺メディアでさえも混乱していますからね…
しかし防災科学技術研究所火山研究推進センターの中田節也センター長によると、トンガの噴火は「噴煙が最大2万メートル(20キロ)近く、半径260キロにも広がっており、1991年のフィリピン・ピナトゥボ火山の噴火と似ている」とのことです。
南太平洋のトンガ諸島で発生した大規模な海底火山の噴火について、防災科学技術研究所火山研究推進センターの中田節也センター長(火山地質学)は「噴煙が最大2万メートル(20キロ)近く、半径260キロにも広がっており、1991年のフィリピン・ピナトゥボ火山の噴火と似ている。噴火規模を0~8で示す火山爆発指数(VEI)も同じ6程度の可能性がある」と指摘した。
引用:朝日新聞デジタル
ピナトゥボ火山はフィリピンのルソン島西側にある火山で、1991年に大噴火を起こしました。
その規模は、20世紀に陸上で発生した噴火として最大規模。
噴火前に1745mあった標高が噴火後に1486mまで低くなっていることからも、噴火の激しさが想像を絶するものだったことがわかります。
ピナトゥボ火山の火山爆発指数は6で、人類存亡の危機となるほどの被害が出る火山爆発指数(VEI)8には及びません。
そして、ピナトゥボ火山の噴出物量は10⁹。
「噴出物量が1010トン以上の噴火が破局噴火」と考えると、ピナトゥボ火山は破局噴火に一歩及ばずという印象ですが、トンガの噴火はどうなるのでしょうか…
おそらくピナトゥボ火山同様、周辺住民の生活を一変するだけでなく、冷夏などで世界中に影響を与えるのではと思いますが、トンガの噴火の噴出物量は今後の報道で明らかになるでしょう。
破局噴火とカルデラ噴火との違いは?
「カルデラ噴火」と「破局噴火」という言葉は度々メディアでも散見されますが、ほとんど同じ意味で使われています。
ともに「壊滅的な大噴火」という意味ですね。
破局噴火が起こるとどうなる?
降灰により森林回復まで200年以上
もし破局噴火が実際に起こった場合、周辺は30m以上の降灰があることで森林が破壊され回復に200年以上の時間が必要と神戸大学教授の巽好幸氏が語っています。
日本で最後に巨大カルデラ噴火の悲劇が起こったのは、今から7300年前、縄文時代に遡る。現在の竹島あたりで発生し、南九州を襲ったこの「鬼界アカホヤ噴火」によって、当地では30センチ以上もの降灰があったことがわかっている。これほどの降灰があると、森林は完全に破壊され、その回復には200年以上の時間が必要だと言われている。
引用:GQ
火砕流で生き物が大量絶滅
カルデラ噴火で発生した火砕流は、摂氏数百度を超えるとか。
これほど高温な火砕流が大量に、しかも時速100キロメートルを超える速度で飛び交うとなれば、周辺の生き物はひとたまりもありません。
「すべての生命活動は奪われる」というのも納得の威力です。
この火砕流は多量のガスを含む上に、流れるときには多量の空気を取り込むために極めて流動性に富む。そのスピードは時速100キロメートルを超える場合もあり、千メートルクラスの山々を簡単に乗り越えてしまうのだ。さらに恐ろしいことに、その温度は摂氏数百度を超える。つまり、巨大カルデラ噴火で発生した火砕流に覆われる領域では、すべての生命活動は奪われることになる。「瞬殺」である。
引用:GQ
神戸大学教授で理学博士の巽好幸氏は、阿蘇山が破局噴火した場合、「2時間ほどで火砕流が700万の人々が暮らす領域を焼き尽くす」と述べています。
その火山灰は日本列島を覆うレベルだといい、破局噴火・カルデラ噴火の威力の恐ろしさを感じます。
阿蘇山が破局噴火した場合、2時間ほどで火砕流が700万の人々が暮らす領域を焼き尽くす。火山灰が日本列島を覆い、北海道東部と沖縄を除く全国のライフラインは完全に停止する
引用:GQ
冷夏でコメ・農作物は不作に
トンガの噴火と同レベルと言われるピナトゥボ火山の噴火では、噴出物が成層圏に大量に放出され、太陽の光が遮られたことで世界的に気温が下がりました。
日本でも2年後には記録的な冷夏となり、コメが大凶作となっています。
ピナトゥボ火山の噴火では、噴出物が成層圏に大量に放出され、太陽の光が遮られて世界的に気温が下がった。2年後には記録的な冷夏となり、日本では米が大凶作となってタイ米を緊急輸入する事態になった。
引用:朝日新聞デジタル